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感動作文コンクール 優秀賞受賞

3年生小野仁頌君が、公益財団法人 上廣倫理財団主催「感動作文コンクール」で優秀賞を受賞しました。

生徒たちは夏期休暇中の課題として、作文を書いてきます。2学期、授業で国語科の先生のアドバイスを受けながら、よりよい作品に直していきます。

生徒の表現力向上を目指している国語科としても、小野君の優秀賞受賞は大変嬉しく思います。おめでとうございます。

 

 

第34回 感動作文コンクール
 高校の部 優秀賞
  「カラーとモノクロ」

 私は、中学校の卒業式から高校に入学するまでの二週間で人生が変わる経験をした。
 私は中学時代、自分が嫌いだった。私は怠け者であり、宿題はやらず、学校もよくさぼり、一日中携帯ばかり触っていた。そんな自分が親を困らせていることは分かっていたため、家の居心地も悪かった。
 そんなある日、家に帰ると親に「短期の語学留学に行ってみない?」と言われた。私は英語が大嫌いで、一人で海外に行く勇気もなかったため、「嫌だ」と言ったが、何度も何度も説得されるうちに、つい「いいよ」と言ってしまった。そこからはとんとん拍子に話が進み、ついに中学校の卒業式から高校入学までの二週間、フィリピンにホームステイをしながら語学留学することになった。
 迎えた出発前夜、私を猛烈な後悔が襲っていた。外国人と話したこともなく、英語もろくにわからない私が、どうして外国に一人で行けるのだろうかと思った。出発日になり、とうとう飛行機に乗る時間が来て、ようやく覚悟を決め、出発した。そしてフィリピンに到着した。空港からは、案内人の方がホームステイ先まで連れていってくれることになっていたので、出口に向かって歩いていったが、空港はあまりに広く、道がわからなくなってしまった。誰かに聞こうと思ったが、周りにはほとんど人がおらず、いるのは大きな銃を持ったいかつい警備員ぐらいだった。本物の銃を見たこともなかった私は、内心とてもおびえていたが、勇気を出して話しかけてみた。するとその警備員の方は、とてもいい笑顔で優しく道を教えてくれた。あんなに怖かった警備員の方が、実はとても優しかったことに拍子抜けすると同時に、「外国人に話しかけることができた」と新しい自分を発見し、新鮮だった。その後、無事に出口に着き、案内人の方と合流してホームステイ先に着くことができた。
 留学中の二週間は、驚きの連続だった。日本とは全く違う風景、生活スタイル、食事などに戸惑うことも多かった。しかし、毎日たどたどしい英語を何とか使い、自分の脳を常にフル回転させながら過ごす日々は、とても充実していた。日本での生活がモノクロの味気ない生活だったとすると、フィリピンでの生活はカラーであり、光り輝いているようにさえ感じた。初めはフィリピンがとてもいい所だからカラーに見えるのだろうと思った。しかし、それは違った。
 楽しかった二週間はあっという間に過ぎ、ついに帰国の日になった。名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、日本へと戻ってきた。日本へ着き、家の最寄りの駅へと向かう電車に乗りながら、「またモノクロの生活に戻るのか」と少し憂鬱な気分だった。しかし、駅に着き外に出た瞬間、私は息を呑んだ。そこは毎日通っていたいつものモノクロな街並みではなく、色鮮やかな街並みが広がっていた。
 「いつもの景色が全く違って見えるのはなぜなんだろう」
 私は、フィリピンに行く前とは決定的に変化したことに気がついた。それは、自信である。フィリピンに行く前は、自信がなく、自分が嫌いだった。しかし、フィリピンに一人で行き、たくさんのトラブルを自分の力で乗り切り、多くの人と話しているうちに、「自分もやればできる」と思えるようになり、自信を持てるようになっていた。その自信が持てたことがモノクロからカラーに変えてしまった。たった一度の挑戦でここまで変わることができるのかと驚き感動した。
 春休みを終え、私は高校に入学した。高校ではボランティアや生徒会など様々なことに挑戦してきた。時には辛いことや悩むこともあったが、すべて自身の成長につながったと高校三年生になった今では確信している。これからも様々な挑戦を続けていきたい。そして、もっと色鮮やかに自分の人生を染めていきたい。
      (本人の了承を得て掲載しています。転載不可)

投稿日: 2021年2月16日